歴史/物語の哲学

岩波講座 哲学〈11〉歴史/物語の哲学

岩波講座 哲学〈11〉歴史/物語の哲学

三島憲一「西欧(オクシデント)の歴史意識」が相変わらず筆が鋭い。鈍り始めた頭にはこれくらいの難度がちょうどよい。ヘーゲルから現在までの歴史哲学を鋭利に整理。特に現在の言語論的展開以降の歴史論を19世紀以来のドイツ歴史哲学のなかに位置づけるのはさすが。
でも、この人はどの哲学者にも容赦しなくてそれが面白いけど、ではこの人自身の理論的立場って何なのだろう。いつか明示してほしいものではある。
あと、相対主義本質主義に陥るメカニズムがよくわからなかった。必然的にそうなるものでもないように思うのだけど。相対主義にある特殊な立場が加わったときにだけ本質主義的絶対主義に陥るんじゃないだろうか。

北川東子「歴史の必然性について」は、歴史についてのエッセイみたいなものを書いていたけど、我々は生きるために歴史を必要としている(歴史が我々を必要としているのではない)というベンヤミンのメッセージはなかなか感動的でもある。でも、歴史なんて知らなくてもほとんどの人は生きていけているのだが、それについてはどう考えるのだろうか。