昨年の収穫

年末にtimmy regisfordというハウスの大御所らしい人のイベントにいったのだけど、やっぱり自分はセンス的には凡庸なのか、重低音がキツくてどうも体に音楽がついていけず、風邪をひいてしまう始末。
年末年始は風邪をひいてダウン。

昨年の収穫といえば、やっぱり

権力と抵抗―フーコー・ドゥルーズ・デリダ・アルチュセール

権力と抵抗―フーコー・ドゥルーズ・デリダ・アルチュセール

かな。現代思想のスターたちを、権力と抵抗という観点から独自に比較し、なおかつ、ジジェクなどによって現在現代思想の最高の理論家として祭り上げられているラカンへの対抗という観点から整理したものとして、現代思想への独自の介入となっている稀有な本だと思う。
バリバールの下で博士号をとり、日本人によりフランス語で日本より先に出版されたという事情も素晴らしい。
個人的には、デリダラカンの関係が明晰になって非常に勉強になったし、何よりアルチュセールを理論家として復活させた意義はとても大きいと思う。

翻訳の成果としては、

野生のアノマリー――スピノザにおける力能と権力

野生のアノマリー――スピノザにおける力能と権力

かな。ポーコックのマキャヴェリ本なんかより、はるかにこちらの本の方が、開いたページどこからでもインスピレーションを受けられる素晴らしい著作だと思う。
もともと別の翻訳家が翻訳を準備していて挫折したらしいけど、それを1年で翻訳し直したというスピードも素晴らしい。

個人的に再発見した著作としては、

かな。1920年代ワイマール期ドイツの文化を、独特の、シュルレアリスム的というか表現主義的とも言われる文体で描写したこの著作からは、文化を、そこにおける野蛮なものといまだ見出されないユートピア的なものの混成として捉えるという実験的試みが活写されていて、とても難解だけれども、恐るべきリアリティというかアクチュアリティを感じられた。
そんなことを考えていたら、なんと昨年末この本の新訳版が水声社から出たみたい。
この時代の遺産

この時代の遺産

やっぱりブロッホが注目されるのは何か時代の流れみたいなのがあるのかもしれない。

文学関係では、田村隆一の詩に夢中になった。

一篇の詩が生まれるためには、
われわれは殺さなければならない
多くのものを殺さなければならない
多くの愛するものを射殺し、暗殺し、毒殺するのだ

見よ、
四千の日と夜から
一羽の小鳥のふるえる舌がほしいばかりに、
四千の夜の沈黙と四千の日の逆光線を
われわれは射殺した

聴け、
雨のふるあらゆる都市、溶鉱炉
真夏の波止場と炭鉱から
たった一人の飢えた子供の涙がいるばかりに、
四千の日の愛と四千の夜の憐みを
われわれは暗殺した

記憶せよ、
われわれの眼に見えざるものを見、
われわれの耳に聴こえざるものを聴く
一匹の野良犬の恐怖がほしいばかりに、
四千の夜の想像力と四千の日のつめたい記憶を
われわれは毒殺した

一篇の詩を生むためには、
われわれはいとしいものを殺さなければならない
これは死者を甦らせるただひとつの道であり、
われわれはその道を行かなければならない

田村隆一エッセンス

田村隆一エッセンス

何か、絶望のあとで生きる方法というか、術を教えてくれている気がする。

音楽関係では
perfumeのアルバムGAMEがやはり最大の収穫だった。

GAME

GAME

今年の後半はずっとこのアルバムをかけっぱなしだったし。紅白出場おめでとう。
特に、アルバムの中のpuppy love

という曲は素晴らしい。

絶対的な信頼と 対照的な行動
絶望的な運命が ある日恋に変わる
一方的な表現の ツンデレーション キミが
好き わかりにくいね